史上初めて、UFO事件に関する査読付き科学論文が学術誌に掲載される

By日曜版 編集部

2025年9月2日

 2025年6月、世界で最も読まれている航空宇宙工学分野のレビュー誌『Progress in Aerospace Sciences』に、UFO事件を扱った初の査読付き科学論文が掲載されました。

 このレヴュー誌には、日曜版で「地球の影に何かいる」として紹介した論文のような、UFO/UAP関連の論文掲載の実績はあるが、「UFO事件」を扱った論文の掲載はこれがはじめて。UFO事件はこれまで、正式な科学的議論の場に乗ることはほとんどありませんでした。それだけに今回の掲載は、大きな転換点といえるかもしれません。

 この論文の著者は、長年UFO研究を続けてきたジャック・ヴァレ(Jacques F. Vallée)、フランス宇宙航空協会のリュック・ディニ(Luc Dini)、そして研究者ジェフリー・メッチャースキー(Geoffrey Mestchersky)の3名。 彼らが発表した研究は、1966年にルイジアナ州で発生した「ヘインズビル事件」を再調査・再解析したもの。この事件は当時、米国空軍の「プロジェクト・ブルーブック」や、コロラド大学が主導した「コンドン委員会」の調査対象となり、1969年に発表された『コンドン報告』にも収録されている。

ヘインズビル事件(1966)

 1966年12月30日午後8時30分ごろ。原子物理学教授ルイ・A・ギャロウェイ(31歳)は、妻(28歳)と5歳・7歳の子どもを連れ、ルイジアナ州ヘインズビル近郊の米国道79号線を北へ走行していた。空は厚い雲に覆われ、霧と小雨が降り、雲底は約300フィート(約90メートル)。雷はなかった。

 妻が前方左手の樹木の上に赤橙色の光を見つけた。光は樹冠より下に位置しているように見え、霧と雨を透かして発光する半球として観察された。それは約2秒周期で、鈍い赤から明るい橙へと規則的に脈動していた。

 やがて、車が光源に最も近い地点に差しかかった瞬間、その光は突如として強烈な白色に輝き、車のヘッドライトを“洗い流し”、道路や周囲の景観を明るく照らし、木々の影を投影した。運転者は眩しさに目を覆い、子どもたちは光で目を覚ました。白色光はおよそ4秒続いたのち、再び赤橙色の脈動に戻った。

 ギャロウェイは車を停めて方角を確認したが、その時点で光は後方にあった。その後走行を続けたが、音や熱、振動など他の作用はなく、光だけが記憶に残った。

 彼は光源までの距離や照度を見積もり、その出力は小型原子炉に匹敵する規模であると算出した。事件はバークスデール空軍基地へ報告され、さらにコロラド大学プロジェクトおよび空軍プロジェクト・ブルーブックにも伝わった。

 1967年春には現地調査が行われたが、焼け跡や放射線の異常は油膜の燃え跡など既知の要因と結びつけられ、決定的な説明は得られなかった。最終的にこの事件は1969年『コンドン報告』に「Case 10」として収録され、「未確認」と結論づけられている。

コンドン委員会が1969年に発表した『Scientific Study of Unidentified Flying Objects(コンドン報告)』

論文の概要

 今回『Progress in Aerospace Sciences』に掲載された論文 「Estimates of Radiative Energy Values in Ground-Level Observations of an Unidentified Aerial Phenomenon: New Physical Data」は、この事件を現代の科学的手法で再解析したものである。

 研究チームは、事件後に現場から回収・保存されていた樹皮サンプルを分析し、自然放射性核種に加えてセシウム137の存在を確認した。これは当時の核実験や既知の放射能汚染では説明できないとされる。

 さらに一次元熱拡散モデルを用いて、樹皮が光に曝露された際の温度変化をシミュレーション。表面温度は数秒で20℃から760℃以上に達し、実際に回収された炭化サンプルの深さと一致することが示された。

 論文は、放射が全方位的であったのか、あるいはビーム状に指向性を持っていたのか複数の仮説を検討。推定放射エネルギーは500〜900メガワットと算出され、コンドン報告時の推定値(500〜1,400MW)を下回るが、それでも小型原子炉に匹敵する規模であった。 著者らは、UAP現象が環境に実際に物理的な痕跡を残し得ることを明確に示した点で、この研究を「逸話的報告にとどまらない、科学的検証可能なデータ」として位置づけている。

最後に

 ヘインズビル事件は半世紀以上「忘れられた事件」として扱われてきた。しかし今回の論文によって、その出来事は再び科学の光の下に置かれることになった。 この出来事は、UFO事件の研究がついにアカデミックな土俵に乗ったことを意味し、今後の研究の方向性を大きく変える可能性を秘めているかもしれない。

The Good Trouble Showで、この事例について語るジャック・ヴァレ
【参考】
For the First Time in History, a Peer-Reviewed Scientific Article on a UFO Case Is Accepted in ‘Progress in Aerospace Sciences’
https://ovniologia.com.br/2025/08/for-the-first-time-in-history-a-peer-reviewed-scientific-article-on-a-ufo-case-is-accepted-in-progress-in-aerospace-sciences.html

Estimates of radiative energy values in ground-level observations of an unidentified aerial phenomenon: New physical data
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0376042125000247