幻のレーシングカー“フォーミュラの怪人”――ついに逮捕、その正体は!?

Byオオタケン

2025年9月16日

フォーミュラの怪人」ついに逮捕

 2025年9月7日の早朝、チェコ警察は長いあいだ「幻のレーシングカー」「フォーミュラの怪人 (Phantom Formula ) 」などとしてSNSやニュースを賑わせていた奇妙な車とドライバーをついに捕らえました。一見、フェラーリのF1マシンに見えるこのレーシングカーが高速道路D4号線を走行している映像は有名で、2019年から年に1、2回の割合で出没していました。ですがドライバーがヘルメットを被っていたために身元の確認が難しく、長い間逮捕が出来ないままでした。

 では、この世界的に有名になってしまった「フォーミュラの怪人」とは何者で、事件の全容はどのようなものだったのでしょうか?

YouTube: 高速道路でF1マシンを発見…またしても #f1 #spotted

高速道路を疾走する“赤いマシン”

 現在、チェコでもニュースやタブロイド紙を賑わしている様子の当事件ですが、事件はプラハから50キロほど離れた、ドブジーシュ城で有名なプルシーブラムで起きました。警察は当日、D4上のガソリンスタンドに赤いF1マシンが複数台の高級車やスーパーカーと共に現れたとの通報を何本も受けました。直ちにパトロール隊やヘリコプターまで出動させ追跡。ですがドライバーは停止を拒否したとされています。

逮捕劇の顛末――ヘルメットを脱がない男

 追跡は最終的に、フォーミュラカーが他の車両に牽引された状態で逃走し、隠れようとしたブク村にある豪邸の庭で終わりを迎えました。問題はここからです。ドライバーは車両から降りようとせず、警察側の不法侵入を訴え、最終的には同行に応じたものの、頑なにヘルメットとレーシングスーツを脱ごうとせず、黙秘を続けたのでした。

自動車メディアの失望と「愚か者」の烙印

 この行動にはチェコの自動車メディアが失望を表明しています。彼は今までも大きな騒動を起こしているわけですから、当然、捕まることを想定していると思われました。ですが「男らしく振る舞い、自分の行動の結果を尊厳を持って受け入れるどころか、フォーミュラドライバーは愚か者のようにシートに座り、言い争い、警察への自首を拒否した。ヘルメットを脱ぐことも、身元を明かすこともなかった。正直なところ、私たちはもっと違う反応を予想していた」と呆れている様子です。

 このメディアは以前、捕まったドライバーの知人からこんな話を聞いていました。

「彼は挑発しているのではない。年に一度公道で運転することもあるが、SNSやテレビでは必ず話題になる。また記事になれば、みんな喜ぶだろう」

 そのため、捕まった際の彼の態度に失望したようです。そして話はここから猛烈にきな臭くなってきます。

驚きの正体――元警官で実業家

 捕まったのはミラン・ブラートニーという51歳の実業家でした。コンサルティング業への関与や有力なデベロッパーとのつながりなど、彼の身辺の詳細はすぐに漏れ出てきました。さらに彼は以前、警察官として働いていた過去があり、現在は一般ドライバーのみならず警察官も相手にした安全運転講習会を開いたりもしていることがわかりました。

息子ルカーシュの“炎上対応”

 ミランが捕まった後、息子のルカーシュがメディア対応に現れました。高級なスーパーカーと共に写る彼の姿はSNSなどで確認出来ます。Tシャツ姿で不貞腐れたように応対する彼は謝罪するどころか、警察が何台ものパトカーやヘリまで出して追跡したことを非難し「お父さんを捕まえることは出来ない」「笑顔で平然と乗り切るだろう」と、まあ見事なバカ息子っぷりを見せてくれていました。

科される罰則と違法の数々

 彼らの身にこれから起こることはどんなものでしょう?まず罰金。ナンバープレートの無い車両を運転した場合、5,000クローナから10,000クローナ (16万円ほど) の罰金と数ヶ月間の運転禁止処分が科せられます。不適格な車両(ライト、ウインカーなどが装備されていない車両)は4,000クローナから10,000クローナの罰金と6点の減点が科せられ、運転禁止処分を受ける場合もあるそうです。更にミランがレーシングカーの運転によって他の道路利用者を危険にさらしたと認定された場合、厳しい罰則が科せられます。

 なお、逃走中にフォーミュラカーを牽引していたルカーシュらが乗っていた車両は無車検の車両で、海外輸送を目的とした車両に付けられる特殊なナンバープレートを付けた違法車両でした。更にはブク村のミランの大邸宅は建築許可が出ておらず、違法建築である可能性も示唆されています。

車両はF1ではなくGP2マシン

 ちなみにミランが運転していたこの車両、正確にはF1 ( フォーミュラ1 ) マシンではありません。その形から見るにF1の下部カテゴリーGP2 (今のF2) で使われていたDallara GP2/08という15年ほど前の車両であるようです。こういうフォーミュラカーは当然、一般道を走らせることなど一切考えられていません。エンジンもタイヤもブレーキもガソリンも特殊で「300キロでサーキットを走る」ことのみ想定されているので、高速道路とはいえ一般道を走るのは相当危険な行為だと思います。

「怪人」の正体が明かされて

 彼らは一体何がしたかったのか?なぜ捕まらないと思っていたのか?謎すぎるのですがチェコ国内でも情報が錯綜しており、今後どうなるのか分かりません。ミランは元警官で金と権力を持った人間なので、なんだか嫌な結末を見せられる気もします。

 ちょっとオカルトとは離れた話題を取り上げてみましたが、UFO/UAPもUMAもそうですが、正体が判明するとガッカリすることが多いです。この「フォーミュラの怪人」も、この様な塩梅のエンディングになってしまいました。せめてミランがサクッと罪を認め、笑顔でヘルメットを脱ぎ「みんなも楽しめたかい?」とか言って堂々と連行されていれば、面白トピックとして長らく愛されたような気もするのですが。

YouTube: チェコの道路で何年も運転していた幻のフォーミュラドライバーの身元が判明
【参照】
iDNES.cz | „Fantom“ ve formuli se proháněl po D4. Řidiče policisté dohnali doma, syn ho brání
Zdroj

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