いまさら聞けない「米下院UFO公聴会」――9月9日に開催される公聴会の予習をしておこう

 2025年9月9日、ワシントンD.C.の連邦議会ビジターセンターで開催されるのは、正式名称を「Restoring Public Trust Through UAP Transparency and Whistleblower Protection(UAPの透明性と内部告発保護を通じた公的信頼の回復)」と題した公聴会。いわば通称「米下院UFO公聴会」の最新版だ。

 この公聴会は、国民に対してUAPに関する政府の透明性を高めることや、AAROなどの政府関連のUAP組織の取り組みを検証し、内部告発者が報復を恐れずに情報提供できるようにすることを目的とした、米国下院の公聴会である――そうなのだが……。

 Xの海外UFO系アカウントや、Redditなどを眺めていると、それがUFO/UAPにとってとても大事なものであることが伝わってくる。でも、ぶっちゃけ「下院」がどうの「公聴会」がどうと言われても、アメリカ議会に馴染みが薄い著者には、よくわからないのだ。そう感じてる同志も多いのではないだろうか?そのあたりをちょっと、一緒に勉強していこうじゃないか、なぁ――というのがこの記事の主旨である。

そもそも「下院」って何なの?公聴会って何やってんの?

 まずは基本から押さえていこう。アメリカの議会は上院(Senate)下院(House of Representatives)の二院制になってる。下院は435議席で、各州の人口に比例して議席数が割り当てられる仕組みだ。任期は2年で、有権者により近い存在として位置づけられている。

 そして「公聴会(Hearing)」は、議会が行政府の政策や活動を監視・検証するための重要なシステム。証人を呼んで証言を求め、議員が質疑を行う。公開される場合が多く、透明性の確保と国民への情報提供が狙いだ。

 今回のUFO公聴会を主催するのは、下院監視・政府改革委員会(House Committee on Oversight and Reform)。この委員会は政府機関の活動を監視し、税金の無駄遣いや不正を暴く「政府の監視役」としての役割を担ってる。要するに、政府に「ちゃんとやってんのか?」と問い詰める場所なわけだ。

米下院で開かれる今回の「UFO公聴会」への道のりと、その意味するところ

 この舞台に至るまでには、いくつかの流れがある。まず背景にあるのは、近年相次いだ内部告発者の証言だ。元軍関係者や情報機関出身者が「政府はまだ明かしていないUAPの情報を持ってる」と暴露し始めて、国民の間で「なんか隠してない?」という声が高まったのだ。

 そうした空気を受けて、フロリダ州選出の下院議員アンナ・ポーリナ・ルナが動いた。彼女は「政府の秘密主義、やりすぎじゃね?」として、下院の「監視・改革委員会」内にある「機密解除に関する小委員会」で、この問題を正式に扱うよう提案した。ここで議題として採択され、証人の招致が始まることになる。

 証人には、空軍退役軍人、実際の目撃証言を持つ海軍関係者、さらに長年この分野を追い続けてきたジャーナリストなどが選ばれた。彼らは公聴会当日、委員会の議員たちから質問攻めにあい、公式記録として証言を残す。そのやりとりは一般にも公開され、ネット配信で見られる予定だ。

 公聴会で語られる内容は、単なる「UFOの話」じゃない。内部告発者が安心して声を上げられる制度作り、そしてAAROのような政府組織がちゃんと機能してるかの検証といった、かなり実務的な話に直結してる。証言の内容によっては、後に「内部告発者保護法」の強化や情報公開を義務づける法案へとつながる可能性もある。

 つまり、今回のUFO公聴会は「国民の知る権利」VS「政府の隠蔽体質」みたいな戦いの最前線なのだ。米下院という国民に最も近い機関でやってるだけに、その一挙手一投足が注目されてるってわけだ。

米下院で繰り返される「UFO公聴会」のこれまでの歩み

 アメリカ議会の中でも、国民に最も近い存在とされる下院。ここで取り上げられるテーマは、政治の最前線であると同時に、世論の強い関心を反映したものでもある。その舞台に「UFO」「UAP」と呼ばれる現象が再び登場したのは、21世紀もかなり進んでからのことだった。

 それ以前には、1966年にJ・アレン・ハイネック博士などが参加した「下院軍事委員会 公聴会」、1968年にジェームズ・E・マクドナルド博士などが参加した「米下院UFOシンポジウム」がなどの、米下院UFO公聴会が開催されている。

▶2022年

──半世紀ぶりに「UFO、どうなってんの?」

 2022年5月、下院情報特別委員会の小委員会で、実に約50年ぶりとなる「UFO公聴会」が開かれた。証言台に立ったのは、国防総省の情報部門を率いる高官たち。彼らは「宇宙人がいる証拠はありません」と慎重な姿勢を崩さなかった一方で、軍パイロットらから報告される「マジで何これ?」的な事例は確かに存在すると認めた。

 公聴会では実際の未公開映像が上映され、三角形の発光物体や高速で移動する球体の姿が議員や国民に示された。国家安全保障、航空の安全、そして政府の透明性──それらがいかにUAP問題と結びついているのかを浮かび上がらせた重要な出来事だった。

2023年

──内部告発者が「政府、隠してるでしょ?」

 その翌年、2023年7月には下院監視・説明責任委員会で再び公聴会が開かれる。ここで大きな話題をさらったのが、元情報機関職員のデイビッド・グラッシュの証言だった。彼は「米政府は地球外起源の物体を回収してきた」とぶちまけて、世界のメディアが大騒ぎすることになる。
 同席した元海軍パイロットのライアン・グレイブスや、あの有名な「チクタク」を追跡したデイビッド・フレイバー中佐の証言も加わり、公聴会は一気に「告発大会」の様相を呈した。単なる現象報告から一歩進んで、「政府、何隠してんの?」という問いが議会で堂々と語られるようになったのだ。

【通訳字幕LIVE】米下院で歴史的な「UFO公聴会」生中継 / House hearing on Unidentified Anomalous Phenomena, or UFOs 2023.7.26

▶2024年

──「UFOは真実」宣言が飛び出す

 その流れは2024年11月13日にも続いた。米下院で13日、UFO公聴会が開催された。監視・説明責任小委員会が主催したもので、「未確認異常現象:真実の暴露」と名付けられた公聴会だ。4人の証人が証言し、UAP(UFOを含む未確認異常現象)が深刻な国家安全保障問題であることが浮き彫りになった。

 この公聴会では、米海軍退役少将のティム・ギャローデット氏は「われわれは目をそらすべきではなく、この新たな現実に果敢に向き合い、そこから学ぶべきだ」と証言。もはや「UFOはあるかもしれない」じゃなくて「あるから対応しろ」レベルの話になってきたのだ。

【通訳字幕LIVE】米下院で歴史的な「UFO公聴会」再び 新たな証言や情報開示に注目 / House panel holds hearing on UFOs(2024年11月13日)

2025年

──「もう隠すのやめません?」的な公聴会

 そして2025年9月、再び下院でUAP公聴会が予定されている。正式タイトルは「UAPの透明性と内部告発保護を通じた公的信頼の回復」だ。招かれるのは空軍退役軍人やUAP目撃者、そして長年この分野を追ってきたジャーナリストのジョージ・ナップといった面々。
 テーマはより制度的な方向へと発展した。政府の秘密主義を正して、AAROのような調査機関がちゃんと仕事してるか検証するだけでなく、内部告発者が「報復されるんじゃ…」と心配せずに証言できる仕組みをどう作るかという話だ。国民が政府を信頼できるようにするために、UAPという題材を通じて議会が本気で問い直そうとしてるのだ。

公聴会を支える4人の証人たち──それぞれの「見てきたもの」

 2025年9月9日に米下院で開かれるUAP公聴会。その舞台に立つ4人の証人は、それぞれ違う立場からUAPと向き合ってきた人々だ。軍の内部、艦上での目撃、メディア報道、そしてインテリジェンス分析──多面的な証言がひとつの場に集まること自体、この公聴会がただ事じゃないことを物語っている。

👤空軍退役軍人 ジェフリー・ヌッチェテリ(Jeffrey Nuccetelli)

──「基地で見た巨大な赤い四角形」

 かつてヴァンデンバーグ空軍基地に勤務していたヌッチェテリは、「巨大な赤い四角形(Red Square)」みたいな意味不明な現象を目撃したことで知られてる。軍内部でその事象がどう扱われて、どんな風に記録されたのか(あるいはされなかったのか)。彼の証言は、組織の内側で実際に起きてたことを明かして、「やっぱり隠してたじゃん」を証明する鍵となるだろう。

空軍基地で遭遇した巨大な「Red Square(赤い四角形)」について語るジェフリー・ヌッチェテリの動画

👤海軍チーフ アレハンドロ・ウィギンズ(Alexandro Wiggins)

──「艦上で見た『あれ』は何だったのか」

 23年以上の海軍勤務を経て、USSジャクソン艦上で意味不明な物体を観測したウィギンズ。点滅する光、海面からいきなり立ち上がる飛翔体──彼はセンサーやレーダーに映ったその姿をリアルタイムで目撃した。生々しい現場体験を語る彼の役割は、「報告書に書いてあることは実際にあったんだ」ということを証明し、UAPが「ガチの出来事」であることを強調するものになるだろう。

2023年、カリフォルニア沖にいた米海軍のUSSジャクソンが、4つのチクタク型のUAPと遭遇。その時、CIC(戦闘情報センター)要員が撮影した動画。

👤ジャーナリスト ジョージ・ナップ(George Knapp)

──「追い続けてきた男」の視点

 ラスベガスを拠点に活動し、数々の報道賞を手にしてきたナップは、あのボブ・ラザーの証言を世に広めたことで知られてる。彼は報道の最前線から、政府とメディアの間にある「見えない壁」を見続けてきた。ナップの視点は、単なる事件記録じゃなく、「なぜ情報が出てこないのか」「なぜ秘密にされるのか」というせめぎ合いそのものを証言することになる。

スキンウォーカー牧場について語るジョージ・ナップ

👤情報分析官出身 ディラン・ボーランド(Dylan Borland)

――「データがどう処理されるか知ってる人」 

 空軍でジオスペーシャル・インテリジェンスを扱い、その後は防衛関連企業でアナリストとして働いたボーランド。彼は技術的分析と情報処理の専門知識を持っていて、内部の情報がどんな風に扱われてきたかを語れる立場にある。データの解釈、報告体制の問題、そして内部告発者が「ヤバい、クビになる」と恐れるリスク──彼の証言は公聴会に理論的な重みを与えるはずだ。

ディラン・ボーランドについて語られた動画

それぞれの証言が描く「全体像」

 ヌッチェテリが「軍の中で見たヤバいもの」を、ウィギンズが「現場でガチ体験したもの」を、ナップが「外から必死に追いかけたもの」を、そしてボーランドが「情報がどう流れる(流れない)かの仕組み」を語る──。

 違う角度からの証言が重なり合うことで、UAPという現象は単なる「不思議な話」や「都市伝説」の域を超えて、社会制度や政府の説明責任と直結した超重要テーマとして浮かび上がらせようとする今回の公聴会は、「あれって結局何だったの?」という謎解きだけじゃなく、「誰が本当のことを言えて、どうやって守られるのか」という、人間と制度の根本的な問題をも問う場になるだろう。9月9日、僕たちは歴史の転換点を目撃することになるかもしれない。

 9月9日午前10時に開催予定の「米下院UFO公聴会」は、以下からリアルタイムで視聴できます。日本ではおそらく、同日の午後11時ごろからのスタートになる予定です。

アメリカ合衆国下院の「Oversight and Government Reform(監視・改革委員会)」の公式ウェブサイト「Restoring Public Trust Through UAP Transparency and Whistleblower Protection(UAPの透明性と内部告発保護を通じた公的信頼の回復)」